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Media Release

NGOら、パプアLNG事業の潜在的な資金提供者であるMUFGに対し世界初のエクエーター原則に基づく異議申立を提出

10 December 2025

2025年12月10日

環境法・地域権利センター(CELCOR, PNG)
ジュビリー・オーストラリア
アジア債務・開発人民運動(APMDD)
JACSES
Market Forces
Reclaim Finance

本日、6つの団体が、パプアニューギニアで計画されているパプアLNG事業について、その潜在的な気候・生物多様性・人権への影響に関する重大な懸念を示す、初の正式な「エクエーター原則」に関する異議申立を提出した。同プロジェクトは TotalEnergies が主導し、共同事業者として 米・ExxonMobil、豪・Santos、日本からはENEOS が参画している。

提出団体は、パプアニューギニア、アジア、オーストラリア、欧州の組織で構成されており、同プロジェクトが エクエーター原則(2003年に開始された金融業界の環境社会リスク管理基準)を順守していないと主張している。苦情は、38か国・130の金融機関が署名しているエクエーター原則に提出された。

今回提出された苦情は、パプアLNGの採掘および生産段階におけるリスクに焦点を当てている。パプアLNGは、パプアニューギニア湾岸州に暮らす1万2,700人以上の主に農村部の先住民族に影響を与える(脚注1)。また、プロジェクト区域には環境科学によって未記載の種を含む100種、および少なくとも27の陸生絶滅危惧種が存在するとされる。苦情では、コミュニティの自由意思による事前かつ十分な情報に基づく同意(FPIC) に関する裏付けの欠如から、生物多様性への深刻なリスクまで、エクエーター原則の10項目中6項目に適合していない可能性があると指摘されている(詳細は末尾)。

影響に関するコメント

ピーター・ボシップ氏(パプアニューギニア・環境法・地域権利センター/CELCOR エグゼクティブ・ディレクター)のコメント

「この苦情は、パプアLNGプロジェクトにおける深刻な人権・気候・生物多様性の懸念を明らかにしています。パプアニューギニアの人々は、先住民族の権利、自然、そして大切な気候を尊重する真の開発を享受すべきです。エクエーター原則には、適切な対応を求めます。」

苦情申立人らは、エクエーター原則に対し、これらの懸念事項について調査を開始し、その加盟金融機関に対して苦情の存在を通知するよう求めています。

特に、本件の苦情ではエクエーター原則の加盟行でありながら本プロジェクトの財務アドバイザーを務め、資金調達を進めていると報じられている日本のメガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)や、同プロジェクトを支援している可能性のあるその他の加盟行に関する懸念が提起されています。

ショナ・ホークス氏(ジュビリー・オーストラリア/環境正義ディレクター)のコメント;

「パプアLNGは、エクエーター原則の信頼性を問う試金石です。プロジェクトの上流開発により、何千人もの先住民族に影響が及ぶにもかかわらず、プロジェクトのリスクや影響、あるいは人権法・国際基準に基づく権利について明確に説明した情報資料を全く確認できませんでした。これは衝撃的です。私たちは不可逆的となりうる幅広い影響を深く懸念しており、即時の調査を求めます。」

MUFGに関する指摘

渡辺瑛莉氏Market Forces エネルギー金融キャンペーナー )のコメント;

「MUFGが多くの銀行が関与を拒否したプロジェクトで財務アドバイザーを務めるということは、同社のリスク管理の重大な欠陥を浮き彫りにしており、ネットゼロ達成を掲げる同行の約束にも明白に反します。MUFGは今回の苦情を真剣に受け止め、徹底した調査を行い、環境および人権に関する自らの約束を守るためにも、パプアLNGプロジェクトから撤退すべきです。」

融資撤退の広がり

すでにおよそ10社に1社のエクエーター原則加盟銀行が、方針や声明に基づきパプアLNGへの融資を拒否しています。2024年には、前任の財務アドバイザーであるクレディ・アグリコル銀行が、気候・生物多様性・人権への懸念についての市民社会からの働きかけを受け、本事業への融資を行わない方針を明らかにしました。主要なPNG・豪州・仏・伊の銀行はすべて本事業への融資を拒否しており、これはプロジェクト主導企業 TotalEnergies の最大の銀行パートナーも含まれています。

Antoine Bouhey氏 (リクレイム・ファイナンス)のコメント:

「すでに15の金融機関が本事業への支援を拒否しています。TotalEnergies と MUFG は世界中の金融機関に支援を求めていますが、エクエーター原則加盟銀行は、パプアLNGがパプアニューギニアの人々、生物多様性、気候にとって深刻な災害となること、そしてエクエーター原則違反であることを認識すべきです。よって加盟銀行は資金提供を行わないと明確に約束する必要があります。」

リディ・ナクピル氏(Asian Peoples’ Movement on Debt and Development・コーディネーター) のコメント:

「100を超える市民社会組織が『Don’t Gas Asia』キャンペーンに参加し、アジア地域のコミュニティは人権・環境・エネルギーの主権を尊重する再エネへの迅速で公正な移行を求めています。パプアLNGは採掘地域だけでなく、そのガスを燃やす発電所周辺の地域社会にも害を及ぼします。MUFGは気候と人々を無視し続けています。アジアの人々は今こそ、MUFGおよび他の企業にガス融資の即時停止を求めています。」

脚注:

(1)TotalEnergies が 2017 年に委託した人権影響評価(HRIA)によれば、プロジェクトの影響圏内には 2016 年時点で 39 の村に約 12,700 人が居住していたとされています。
出典:The Danish Institute for Human Rights, Papua LNG Human Rights Impact Assessment, Focus on Gender, Security and Conflict, 2019.

苦情メカニズムについて

エクエーター原則には正式な苦情処理制度が存在しないため、今回の苦情は、BankTrack(オランダのNGO)が運営するオンライン苦情チャネルを通じて提出された。BankTrack は過去20年間、エクエーター原則に関する市民社会の取り組みを支援してきた。これまでにも同原則に関する批判はあったが、今回の提出は、公開された形で行われた初の正式な苦情となる。

エクエーター原則について

エクエーター原則は、金融機関がプロジェクト融資に際し、環境・社会リスクを特定・評価・管理するための国際的な枠組みです。

加盟金融機関は10の原則への遵守を約束し、国際金融公社(IFC)パフォーマンス基準などの国際的ガイドラインも参照します。

今回の苦情では、原則2、3、4、5、6、10への不遵守が指摘され、原則8について追加コメントが付されています。

補足: 苦情で指摘された主な懸念点

懸念点として挙げられている事項は以下のとおりです:

  • プロジェクトの具体的内容、リスク、影響、代替案を明確に説明する地域住民向け情報資料の不足。
  • 地域住民が以下の権利保護に関する規定について知らされているという証拠の欠如:
    • エクエーター原則
    • フランスの「デューディリジェンス義務法(Duty of Vigilance Law)」
    • EU企業持続可能性デューディリジェンス指令(EU CSDDD)
    • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
    • OECD多国籍企業ガイドライン
  • 自由意思による事前かつ十分な情報に基づく同意(FPIC) の裏付けとなる明確な証拠の欠如、または先住民族が国際法上認められた FPICの権利(プロジェクトを拒否する権利を含む) を知らされているという証拠の欠如。
  • 気候変動リスク評価(CCRA) の公表資料の欠如。
    特に、TotalEnergies は過去にフランス裁判所とドイツ裁判所でグリーンウォッシングの有罪判決を2回受けているため、CCRAの公開と市民の監視は不可欠である。
  • 完全かつ公開された最新の人権影響評価(HRIA) の一般公開が不足。
  • 上流工程における設備廃止(デコミッショニング)計画の欠如。
  • 経済モデリングの欠如。
    パプアLNG事業が湾岸州(Gulf Province)やPNG全体の経済に及ぼすコスト・便益の体系的分析が存在しない。
  • 金融犯罪リスクや不正行為に関する検討不足。
    国際的な金融活動作業部会(FATF)は、汚職・環境犯罪・政治的影響力のある人物(PEPs)に関連するリスクを理由に、PNGを“グレーリスト候補”として警告している。
  • 極めて深刻な生物多様性リスク。
    プロジェクト区域には環境科学にとって新種または未記載の種が100種、さらにIUCNレッドリストおよびCITES附属書Iに掲載される複数の絶滅危惧種が含まれる。
  • さらに、世界で最も危機に瀕する100種の一つである「**ブルマーオオコウモリ(Bulmer’s Fruit Bat)」が、生物多様性リスク評価から理由なく除外されており、初期調査の助言にも反している。
  • ジェンダーリスクの十分な検討不足。
  • プロジェクトの環境影響評価書(EIS)やその他重要資料がオンラインに掲載されていない。
    上流工程EIS補遺(Addendum)には、参照している基礎調査が添付資料に含まれていない。中央処理施設(CPF)の計画地点から700m以内に住む小規模コミュニティの移転に関する懸念。
  • 同じ湾岸州で計画されている Pasca A や、Pandora・Uramaガス田に関連した浮体式LNG施設など、他の化石燃料プロジェクトとの累積影響の検討不足。
  • 適切な地域住民向け情報がないため、効果的な苦情処理メカニズムの欠如。