プロジェクト概要
ブラウズLNG——数十億ドルの賭け、犠牲になるのはサンゴ礁
画像提供:Nush Freedman/西オーストラリア州自然保護協議会
ブラウズLNG:MIMI社による数十億ドルの失策
日本の三菱商事と三井物産は、合弁会社である「Japan Australia LNG(MIMI社)」を通じて、世界のエネルギーの未来と安定した気候の実現に逆行する賭けを強めています。
MIMI社は、BP、中国石油天然気(PetroChina)、ウッドサイド・エナジーといった石油・ガス大手や大量排出企業とともに、オーストラリアで計画されている「ブラウズ液化天然ガス(LNG)プロジェクト」を推進しています。
- ブラウズLNGプロジェクトの建設予定地は、オーストラリアの海洋生物多様性の宝庫であり、絶滅危惧種のアオウミガメやピグミーシロナガスクジラの生息地であるスコット・リーフを直接的に脅かしています。石油流出などの産業事故が起これば、これらのかけがえのないサンゴ礁とその生態系に深刻な被害をもたらすことになります。
- 三菱商事と三井物産の両社はいずれも、2050年までにビジネスにおける温室効果ガス排出のネットゼロ達成を目標として掲げています。しかし、炭素集約度の高いブラウズLNGプロジェクトが計画通りに進めば、数十年にわたって二酸化炭素換算で8億8,700万トン(Mt CO₂-e)の温室効果ガスを排出することになります。
- ブラウズLNGプロジェクトは、国際市場でも自国内においてでも、堅実な投資といえるほどのコスト競争力を有していません。さらに、推進側が本プロジェクトでの排出量「削減」のために利用するとしている炭素回収・貯留(CCS)計画も、コストが高く信頼性が低いものです。
再生可能エネルギーを活用する安全な未来に投資する代わりに、MIMI社は財務面でも環境面でも不利な状況が重なるブラウズLNGプロジェクトに、巨額の資本を投じています。MIMI社は、私たちが望むエネルギー移行と、気候が安定した未来の実現を妨げているのです。
三菱商事と三井物産(MIMI社)は、今こそブラウズLNGプロジェクトから撤退すべきです。
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ブラウズLNGとは
300億ドル超の規模とされるブラウズLNGプロジェクトは、西オーストラリア州沿岸から数百キロメートル沖合で天然ガス開発を行うものです。ブラウズ海盆に位置する巨大なガス田(ブレックノック、カリアンス、トロサ)は、サンゴ礁の下に位置するオーストラリア最大の未開発の在来型天然ガス貯留層です。このプロジェクトを実現するためには、手つかずの自然が残るスコット・リーフ周辺で 50本以上の坑井を掘削する必要があります。
ブラウズ海盆とスコット・リーフを示す地図。画像提供:オーストラリア海洋保全協会(AMCS)
ブラウズLNGの権益は、大量排出企業によって共同で保有されています。内訳は、オーストラリアの石油・ガス大手ウッドサイド・エナジー(30.6%)、BP(44.3%)、中国石油天然気(PetroChina)(10.7%)、三菱商事・三井物産(MIMI社)(14.4%)です。プロジェクトの操業主体(オペレーター)はウッドサイド・エナジーです。
MIMI社、ウッドサイド・エナジー、およびその他のガス企業は、海洋生態系に深刻な環境リスクをもたらすプロジェクトを進めようとしています。本プロジェクトで産出されるガスは、2基の浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)で処理された後、海底に敷設される全長900キロメートルのパイプラインを通じて陸上施設へ輸送される計画です。
ブラウズLNGプロジェクトで産出されるガスの大半は、西オーストラリア州カラサにあるウッドサイド・エナジーが操業するノース・ウェスト・シェルフ(NWS)LNG処理プラントで処理され、国際市場へ輸出されます。
2025年、ブラウズLNG関連プロジェクトであるNWSは、操業を2070年まで延長することが承認されました。それにもかかわらず、NWSの権益保有企業の一社であるシェルは、保有持分を売却したいとの意向を示しました。
ガス田の一部が発見されたのは約50年前にもかかわらず、ブラウズLNGプロジェクトは、自然保護活動家や気候活動家など市民の強い反対によって、いまだ実現に至っていません。
ブラウズLNGが環境に与える影響
炭素爆弾
ブラウズLNGプロジェクトのガス田は炭素集約度が極めて高く、二酸化炭素(CO₂)の平均濃度は約10%と、スカボロー・ガス田(0.1%)の100倍に達します。
本プロジェクトのガスを燃焼させることに伴う排出量は、CO₂換算で8億8,700万トンと推定されており、これはオーストラリア最大の石炭火力発電所を65年以上連続で稼働させた場合の排出量に相当します。炭素回収・貯留(CCS)の導入が計画されていますが、この技術の信頼性とコストの妥当性については長年にわたり疑問が呈されています。また、Accela Researchによる分析では、CCSで対応できるのは最大で見積もっても本プロジェクトの総排出量のごく一部にとどまるとされています。
脆いサンゴ礁生態系の破壊
スコット・リーフは非常に豊かな海洋生物多様性を有しており、数千種に及ぶ生物が生息しています。過去1,500万年にわたり形成されてきた2つの大きなサンゴ礁から成るこの古代のサンゴ礁群は、ブラウズLNGプロジェクトの進行によって深刻なリスクにさらされます。
スコット・リーフには、数千種のサンゴや魚類、サメ、エイのほか、絶滅危惧種のアオウミガメやピグミーシロナガスクジラが生息しています。画像提供:Nush Freedman/西オーストラリア州自然保護協議会
オーストラリア海洋保全協会によると、本プロジェクトは以下の点でスコット・リーフに直接的な脅威をもたらしています。
- 地震探査に伴う発破
- 水中での産業活動による騒音
- 化学汚染
- 光害
- 生息環境の攪乱
- 石油流出のリスク
- 海底地盤沈下のリスク
汚染の影響と事故のリスクは、地域の海洋生態系を損なうだけでなく、オーストラリアの美しいキンバリー地域やスコット・リーフ北方のインドネシア諸島にまで及ぶ可能性があります。
さらに、ブラウズは数百万トンの温室効果ガスを新たに排出し、気候危機を助長させ、サンゴ礁に被害をもたらす海洋熱波(海水の異常高温現象)の発生を引き起こす原因となります。
ブラウズLNGプロジェクトによる排出とスコット・リーフへの潜在的なリスクは、三菱商事と三井物産が掲げる2050年ネットゼロ目標の趣旨に反しています。
海洋熱波後のサンゴの白化
ブラウズに対する地域社会の懸念
ブラウズに対しては長年にわたり市民の反対が続いており、過去の計画案に対しては西オーストラリア州環境保護庁(WA EPA)に11,000件を超える意見書が提出されています。環境や社会、先住民の文化遺産に関する懸念は今なお続いています。
ブラウズLNGプロジェクトで産出されるガスのほとんどは、ムルジュガ国立公園に隣接するノース・ウェスト・シェルフ(NWS)LNG処理プラントで処理され、国際市場へ輸出されます。
ムルジュガ国立公園が位置するのは、世界で最も大規模かつ多様な岩絵群を有する地域です。ここには100万点を超えるペトログリフ(岩面彫刻)が存在し、最古のものは5万年前にさかのぼるなど、オーストラリアの先住民の人々にとって極めて重要な意味を持っています。
ムルジュガ国立公園に残る古代の岩絵と、近隣で稼働するアンモニアプラント。西オーストラリア州ピルバラ、バラップ半島のムルジュガ国立公園。画像提供:Marius Fenger/ウィキメディア・コモンズ
ノース・ウェスト・シェルフ(NWS)を含むムルジュガ周辺の産業施設からの排出は、極めて貴重な岩絵に影響を及ぼしています。近隣の産業活動による目にみえる損傷がすでに確認されています。先住民の長老や科学者、権利擁護団体は、計り知れない歴史的・文化的価値を持つこの岩絵を守ることを誓っています。
また、インドネシアの漁民は数百年にわたりスコット・リーフを訪れてきています。サンゴ礁が損傷し魚類資源が減少すれば、これらの漁師たちは生計の手段を失うおそれがあります。
なぜ三菱商事と三井物産が関与しているのか
NWSプロジェクトには日本からの長期的な顧客がおり、日本全体で西オーストラリア州のLNG輸出量の40%を購入しています 。NWSからLNGを購入している企業には、JERA、東京ガス、大阪ガスなどが挙げられます。
2018年以降、西オーストラリア州の国内向け天然ガス価格は2倍に上昇しています。ガス輸出業界は長年にわたり、最小限のロイヤリティ(利用料)しか支払ってきていません。オーストラリアでは、ビールを飲む人の方がガス企業よりも多くの税金を負担しているのが現状です。
三菱商事と三井物産はブラウズの開発に参画することで、日本国内および日本企業が第三国にLNGを再販売している海外市場においても、リスクが高く価格変動の大きいLNG市場への関与を一層強めています。
ブラウズLNGに対して私たちができること
気候と地域社会に被害をもたらすブラウズから撤退するよう、三菱商事と三井物産に対し、一緒に働きかけませんか 。
三菱商事・三井物産へ、ブラウズからのLNG輸出は複雑で高いリスクを孕んでいます。再生可能エネルギーを活用する、安全な未来を選んでください!
よくある質問
1. LNGとは何ですか?
液化天然ガス(LNG)は主にメタンで構成されており、およそマイナス162℃まで冷却することで体積を600分の1に縮小し、パイプラインが整備されていない地域へ専用タンカーで海上輸送できるようにしたものです。輸送先では再び気体に戻され、産業用、商業用、家庭用、輸送用のエネルギーとして利用されます
2. 新規のLNGプロジェクトは必要ですか?
国際エネルギー機関(IEA)は、LNGターミナルの新設は1.5℃目標に整合する世界とは両立しないとしています。グローバルエナジーモニター(GEM)によれば、新たな石油・ガスの上流開発には、15年という長いリードタイムが必要です。現在稼働中および建設中のLNG設備による供給能力は、将来的に供給過剰を引き起こすと見込まれています。地政学的混乱に起因する最近のLNG価格の変動は、再生可能エネルギーと蓄電池がエネルギー自立に向けたより恒久的な解決策であることを明確に示しています。
3. LNGは石炭よりクリーンな代替エネルギーではないのですか?
LNGの環境負荷については重大な疑問が提起されており、米国産LNGを対象とした学術研究では、輸出されるガスは石炭よりも33%多くの温室効果ガスを排出することが示されています。
LNGの主成分であるメタンは強力な温室効果ガスであり、その地球温暖化係数は20年間でCO₂の80倍以上に達します。
天然ガスは石炭よりもクリーンである、という説に異議を唱えた画期的な研究の著者であるロバート・ホワース氏は、「天然ガスもシェールガスもすべて気候に悪影響を与えます。そして、液化天然ガス(LNG)はさらに悪い影響をもたらします」と述べています。査読を経て公表された同氏の研究によれば、LNGの掘削、処理、輸送、貯蔵に伴うメタンおよび二酸化炭素の排出は、その総温室効果ガス排出量の約半分を占めています。
4. ブラウズLNGは雇用を生み出しますか?
石油・ガス産業は全般的に、労働力よりも高価な設備に依存することで知られています。そのため、西オーストラリア州においても雇用規模としては比較的小さく、同産業の雇用者数は1万人未満で、全労働人口(164万人)の0.6%未満にとどまっています。
免責事項
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