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Media Release

分析: 日本の大手機関投資家5社、化石燃料拡大企業に6兆円以上を投資

11 June 2025

Wednesday 11 June: マーケット・フォースが本日発表した分析により、みずほフィナンシャルグループ/第一生命保険、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村ホールディングス、日本生命保険の日本の主要機関投資家5社が、世界で最も積極的に化石燃料の拡大を進めている企業群に対し、計406億米ドル(約6.1兆円)を投資していることが判明した。

石炭・石油・ガスといった化石燃料の拡大を主導する190社の企業群「化石燃料拡大企業指数(Fossil Fuel Expansion Index, 以下FFEI企業)」に対して、調査対象となった日本の投資家が行う投資の80%以上が伊藤忠商事、三井物産、三菱商事、丸紅、エクソンモービル、BHP、INPEX、シェブロン、大阪ガス、中部電力の10社に集中していることも明らかになった。同10社の化石燃料事業の拡大計画だけで、7.7ギガトン(CO2換算)の温室効果ガスが大気中に排出されることになり、再生可能エネルギーの導入によりこの約3年間で達成してきた排出量削減のための努力が水の泡になってしまう計算になる

主な調査結果:

  • 日本の大手機関投資家5社は、FFEI企業に406億ドル(約6.1兆円)を投資。一方で、再生可能エネルギー企業への投資は432億ドル(約6.5兆円)と拮抗しているものの、気候変動対策の観点から不十分な比率にとどまっている(1.07:1、目標は4:1)。
  • 調査対象となった投資家から行われる投資について、FFEI 企業190社のうち伊藤忠商事、三井物産、三菱商事、丸紅、エクソンモービル、BHP、INPEX、シェブロン、大阪ガス、中部電力の10社に81%の投資が集中しており、これらの企業の拡大計画によって7.7ギガトン(CO₂換算)の温室効果ガスが排出される可能性がある。
  • これらの投資によって、機関投資家のクリーンエネルギー投資による排出削減効果が帳消しになる懸念がある。
  • 日本の機関投資家は、気候変動に関する株主提案には一定の支持を示す一方で、化石燃料企業の取締役の選任議案については99%の割合で賛成票を投じており、スチュワードシップ責任を果たしていない実態が明らかになった。

マーケット・フォースのエネルギーファイナンスアナリストを務める鈴木幸子氏は

「化石燃料企業の中でも世界で最大規模の拡張計画を持つ企業に絞り、日本の主要機関投資家5社によるこれら企業群に対する投資の分析は新規性があると思います。日本の主要機関投資家が化石燃料の拡大を許すことで、気候変動が悪化するとともに、今後の安定した気候の確保に必要な、クリーンエネルギーへの迅速な転換へ十分な支援が行われない状況となっています。
排出量の多い企業へ投資し続けるのであれば、投資家はこれら企業が化石燃料から脱却しクリーンエネルギーへ転換する戦略をサポートするために投資のチカラを使わなければなりません。日本の主要機関投資家は、化石燃料を拡大する企業に責任を問う必要があります。長期的なリターンを確保する投資家の責任を果たすためにも、来たる株主総会にて、これら企業の取締役選任議案に反対すべきです。」

と語る。

提言

アセットマネージャー向け

  • 野心的な目標を設定する
    • ポートフォリオ排出量を1.5℃経路に整合させるようコミットする。
    • 投資先企業に対し1.5℃経路と整合する目標を設定する。とりわけFFEIで特定された化石燃料を拡大する企業に対し、同目標を設定する。
    • 再生可能エネルギーへの投資規模を拡大する。
  • 以下を実践して、効果のないスチュワードシップで評判を損なうことのないようにする;
    • 最も規模の大きい化石燃料事業拡大計画を有する投資先企業へのスチュワードシップを最優先する。
    • ポートフォリオにおいて排出量の多い企業とのエンゲージメントに関する情報開示を強化する。
  • 議決権行使の方針に基づき、実効性のある形で「有言実行」する。
    • エスカレーションを実施する際のタイムラインや基準など、そのプロセスを明確にする。
    • 気候変動への対応を理由に、排出量の多い企業の取締役選任議案に反対し、その旨事前に表明する。
    • 気候関連の株主提案議案に賛成し、その旨事前に表明する。

アセットオーナー向け

  • 資産運用会社に対し、上記の提言のような、より効果的なスチュワードシップを発揮するよう促す。
  • ポートフォリオを1.5℃経路に整合させるようコミットする。


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