DOCUMENTARY
Walk With Us
オーストラリア先住民族から日本の金融機関、企業、政府へのメッセージ:サントス社への支援は今すぐやめるべき
『Walk with Us (共に歩みましょう)』とは
ドキュメンタリー『Walk With Us (共に歩みましょう)』は、豪サントス社によるバロッサ(Barossa)とナラブライ(Narrabri)ガスプロジェクトに反対する運動をさらに強化するためにゴメロイ(Gomeroi)とティウィ諸島(Tiwi Islands)の先住民族たちが団結する物語です。
サントス社は、850基のガス井を建設するナラブライ(Narrabri)ガスプロジェクトをニューサウスウェールズ州ナラブライ近郊のピリガ森林で計画しており、ゴメロイ・カウントリーに住む先住民族の人々は長年にわたって反対活動を継続してきました。
ティウィ諸島の先住民族たちは、現在サントス社が、ティウィ諸島海域でのガス掘削を計画しているバロッサガス田プロジェクトに対して、同様の闘いを開始しました。
ティウィ諸島上空からの眺め。
MUFG、みずほFG、SMBCグループ(3メガバンク)は、事業活動において人権尊重の責任を果たす努力をし、先住民族の権利を尊重すると宣言しています。
しかし3メガバンクは、サントス社が自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)を得ることなく化石燃料事業を進めていることを承知しながらも、金融支援をおこない、地球環境を破壊するだけでなく、先住民族の権利をも侵害する破壊的な事業の継続を可能にしています。
ゴメロイ(Gomeroi)とティウィ諸島(Tiwi Islands)の先住民族は、サントス社に金融支援を行う金融機関に対して、明確なメッセージを送っています。
“サントス社との関わりを絶つべきだ!”
メガバンクがこのままサントス社やバロッサガス田プロジェクトに支援を続けることは、評判リスクや訴訟リスクを生み出します。
バロッサガス田プロジェクト
豪サントス社が、韓国のSK E&Sと日本の株式会社JERAと行うバロッサガス田プロジェクトは、オーストラリア・ノーザンテリトリー州、ダーウィンの北約300kmの沖合に大規模な新規ガス田を開発する事業です。この事業が実現すれば、沖合ガス田からダーウィンにあるLNG処理施設まで海底パイプを用いてガスが輸送される予定です。
この事業は、伝統的所有者との協議の適切性をめぐって訴訟が提起されために1年以上も停止され、重大な規制上の不確実性がありました。また、新たな排出規制により、同事業のコストとリスクが増大しています。(詳しくはこちら)
サントス社のバロッサガス田プロジェクトによって影響を受けるティウィ諸島海域を視察する先住民族の代表のアントニア・バーク、ミア・ライト、カーラ・キンチェア。
先住民族の権利の侵害
ゴメロイ(Gomeroi)とティウィ諸島(Tiwi Islands)の先住民族の代表たちは、サントス社に対し、彼らの土地と海域でガス開発がされることに同意しておらず、サントス社とそのプロジェクトを受け入れないことを明確に表明しました。
ティウィ諸島の先住民族たちは、サントス社のバロッサガス田プロジェクトについて、コミュニティとの十分な協議を怠ったとして、連邦裁判所に訴えを提起しました。
このような反対の声、運動にも関わらず、サントス社はバロッサとナラブライのガスプロジェクトを推し進め、ゴメロイの先住民族が有するピリガ森林の所有権を蹂躙しています。ゴメロイの先住民族たちも連邦裁判所に訴えを起こしています。
これらの事例は、サントス社がガス生産の拡大を追求するためには、気候変動の悪化や先住民族の意思や権利の侵害など、手段を選ばないということを明らかにしています。
ピリガの森にある聖なる砂岩の洞窟に足を踏み入れるゴメロイの女性、ミア・ライトとカーラ・キンセラ。サントス社のナラブライガスプロジェクトによって、この素晴らしい文化的価値のある自然遺産が危機に瀕している。
気候変動と生物多様性、漁業への影響
バロッサガス田から採掘されるガスには多くの二酸化炭素が含まれており、ダーウィンのLNGプラントで処理できる3倍の二酸化炭素が含まれています。専門家はバロッサガス田はLNGを副産物とする二酸化炭素排出工場になると懸念を示しています。
また、このプロジェクトは、絶滅の危機に瀕しているヒラタウミガメやヒメウミガメなど、この地域の海洋生物の重要な生息地に影響を与える可能性があります。
このプロジェクトにより、漁業者はオーストラリアで最も重要な2つの漁場へのアクセスを失う可能性があり、また、建設やそれに伴う騒音や光害は水産資源の生息地や孵化に害を及ぼすとされています。
バロッサガス田プロジェクトに関わる日本企業
バロッサガス田プロジェクトには日本企業の参画に加え、日本の金融機関や輸出信用機関が資金的な支援を行っています。
JERA:バロッサガス田プロジェクトの権益を12.5%取得し、事業に参加。
JBIC: 株式会社国際協力銀行は、日本政府が全株式を保有する輸出信用機関。JERAの現地法人へ融資金額346百万米ドル限度(JBIC分)の貸付契約を締結。
3メガバンク(MUFG、みずほFG、SMBCグループ):サントス社への10億米ドルの融資を行った銀行団に参加。
三菱商事:バロッサガス田プロジェクトからの長期LNG供給・購入契約を結んでいると報じられている。
MUFGとSMBCグループは、洋上生産プラントであるバロッサFPSO施設へ融資を行った銀行団にも参加しており、それぞれも8,368万米ドルと7,214万米ドルの融資を行った。
豪サントス社を支援する日本の3メガバンク
3メガバンクは事業活動において人権尊重の責任を果たす努力をし、先住民族の権利を尊重すると宣言しているにも関わらず、先住民族の権利を侵害している事業を推し進めるサントス社を支援しています。
驚くことに、3メガバンクは、前述のバロッサガス田プロジェクトの裁判が行われている間にサントス社への融資を行っています。先住民族から権利侵害があり、適切な協議が行われておらず、同意も得られていないという問題提起があったことを認識していたにも関わらず融資に踏み切ったということは、3メガバンクが自行の人権尊重宣言を真剣に受け止めておらず、また、人権デューデリジェンスが適切に行われていないことを表しています。
3メガバンクは、サントス社に融資し、同社が地域コミュニティの声を無視し、文化的遺産を危険に晒している状況を放置することで、先住民族の要望、期待を裏切っていると同時に、評判リスク、訴訟リスクを生み出しています。
2023年4月、ゴメロイ(Gomeroi)、ティウィ諸島(Tiwi Islands)、ララキア(Larrakia)の先住民族たちは、このような状況を鑑み、3メガバンクに人権侵害の異議申し立てを行いましたが、3メガバンクから主だった対応はいまだに明らかにされていません。
東京にある3メガバンクの支店前。Photo credit : Market Forces
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