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JERA: 知られざる日本最大のCO2排出企業

東京電力と中部電力の合弁会社であるJERAは、クリーン・エネルギー経済へと導くグローバルリーダーとしてのブランドを確立しようとしながら、日本や世界に汚染を引き起こす化石燃料を押し進めています。

東京電力と中部電力への株主提案に関連する、専門家の方々を交えたウェビナーはこちらからご覧いただけます。

クリーン・エネルギーへの移行を支援するのであれば、JERAは直ちに化石燃料投資を止める必要があります!

JERAの化石燃料支援に関する真実

  1. JERAは最大出力ベースで国内最大の火力発電事業者で(横須賀と武豊で建設中の石炭火力を含む)、「JERAゼロエミッション2050」の一環として、化石燃料から製造されたアンモニア・水素の混焼を進めようとしています。
  2. JERAはオーストラリア、バングラデシュ、ベトナムなどの国々において、LNG部門の大幅な事業拡大を積極的に進めています。具体的には、豪州バロッサLNGなどのLNGガス田、およそ5カ所のLNG輸入ターミナル[1] 、それにLNG to Powerプロジェクト(最大発電容量の合計11.6GW)[2]などです。
  3. JERAの事業活動により、世界で年間約169MtCO2-eの温室効果ガスが排出されています。これは日本の年間排出量の15%に相当します(2020年)。
  4. JERAの事業に占める再生可能エネルギーの割合はわずか1%ですが、クリーンエネルギー企業であることを謳っています。

化石燃料の開発・調達・発電に係るJERAの事業は、パリ協定の目標やIEAのネットゼロシナリオ(NZE2050)に整合しない

JERA、およびJERAの株主の東京電力、中部電力は、2050年までにCO2の排出を実質ゼロにすることを約束していますが、その道筋には多くの懸念があります。

  • IEAの2050年ネットゼロのシナリオ(NZE2050)では、すでに開発が承認されているプロジェクトを除き油田・ガス田の新規開発や拡張はできないとされています。もし、JERAが2050年までにネットゼロを目指すのであれば、直ちに油田・ガス田の新規開発・拡張を行わず、オーストラリアのバロッサガス田のようなプロジェクトにも投資しないことで、それを示すべきです。
  • また、NZE2050では、「2040年までに排出削減対策の無いすべての石炭発電所を段階的に廃止する」ことを求めており、「現在建設中または計画中の多くの液化天然ガス(LNG)液化施設も必要ない」としているます。さらなる石炭発電所やLNGターミナルへの投資は行うべきではありません。
  • 気候リスクを懸念する投資家は、アンモニア混焼技術(ブルーアンモニアも含む)を今後利用すると主張するすべての企業を警戒すべきです。なぜなら、アンモニア混焼はコストが高く、大量のエネルギーを要する発電方法であり、その排出削減効果は控えめに言っても疑わしいからです。

JERAは、LNGは化石燃料からの脱却に不可欠であると主張していますが、大規模なLNGプロジェクトのスポンサーとなることで、JERAは二酸化炭素排出量を増やし、ベトナムやバングラデシュなどのアジア諸国を再生可能エネルギーの開発ではなく、化石燃料に縛り付けているのです。

Oil Change Internationalの分析によると、石炭からガスに切り替えても、パリ協定を達成するには炭素排出量を十分に削減することができないとしています。輸入されたLNGは、ガスの抽出、加工、貯蔵、輸送、燃焼による排出を合計すると、石炭と同程度の汚染度を持つ可能性があります

オーストラリアに“炭素爆弾”を設置:バロッサLNG

このプロジェクトには世界最大級のCO2貯留層があり、建設された場合、稼働中数百万トンの温室効果ガスが排出されると予測されています。

このプロジェクトは、絶滅の危機に瀕しているヒラタウミガメやオリーヴリッドリーなど、この地域の海洋生物の重要な生息地に影響を与える可能性があります。

このプロジェクトにより、オーストラリアで最も重要な熱帯漁業の2つが重要な漁場へのアクセスを失う可能性があり、耐震実験が水産資源に害を及ぼすとされています。

LNGへの関与は高い財務リスクを伴う

LNG storage

JERAは、パリ協定の失敗を前提とし、IEAのネットゼロ2050シナリオから外れたプロジェクトに投資しているため、提案した資産が座礁するリスクを抱えています。JERAの株主である東京電力、中部電力、および東京電力、中部電力の投資家は、JERAを通じてこれらのリスクにさらされることになります

JERAは2050年までにネットゼロをコミットしていますが、化石燃料に依存しているため気候変動リスクに大きくさらされているにもかかわらず、この目標を達成するための一貫した計画(短期・中期目標を含む)を持っていません。

気候関連財務情報開示タスクフォースは、気候リスクは財務リスクであるとし、企業が気候関連リスクを管理しているかどうかを投資家が評価できるように、企業が短期・中期目標を設定することを推奨しています。

JERAは、事業の1%しか再生可能エネルギーに投資しないことで、成長市場への進出の機会を逃しているのです。

日本の新しい石炭発電プロジェクト:横須賀

日本の横須賀では、石油火力発電所のリプレース案件として石炭火力発電所(650MW×2基)の建設が進んでいます。この発電所が稼働すれば、年間746万トンのCO2が排出されると推定されており、その量は過去の石油火力発電所の排出量を超えるものとなります。2023年と2024年の運転開始を阻止しようと住民が訴訟を起こして反対運動を続けています。

武豊でも新規の石炭火力発電所(1,070MW)が建設され、2021年 9月 にボイラの火入れを行い、2022年8月の運転開始に向けた調整が進められています。

JERA自らが掲げる「2030年までに非効率石炭火力発電所をすべて停廃止」を実現するなら、新規石炭火力発電所はいりません。

Yokosuka protest. Photo credit: Kiko Network

Photo credit: Kiko Network

クリーン・エネルギーへの移行を支援するのであれば、JERAは直ちに化石燃料投資を止める必要があります!

[1]マタバリLNGターミナルの入札者、マタバリLNGターミナルの事業者であるSummit Internationalの株主、カナLNGターミナル 、ティエンラン1工業団地ハイフォンターミナルの事業者(見込み)。
[2]マタバリサミットLNG発電所(2,400MW)の事業者であるサミット・インターナショナルの株主、バックリウ(3,200MW)の入札者、カナ1(1,500MW)およびハイフォンのフェーズ1・2(4,500MW)の事業者(見込み)。